(SCAN療法とは、アキュスコープによる全身通電とマイオパルスによる患部局所通電を組み合わせた治療法です)
▷ 個人情報
【性別】 女性 50代
【身長】161.1 cm 【体重】51.5 kg
▷ 医学的情報
【診断名】
左腓腹筋内側頭肉離れ(V度損傷):Nクリニックにて診断
【症状・主訴】
歩行・荷重時の下腿部の痛み
【受傷・現病歴】
2020年1月16日、テニスの試合中のサーブへ向かう際に(歩行中)に左下腿部に痛みを感じ歩行が困難となった。その直前のプレーでは左脚で地面を強く蹴り右前方へダッシュをした。
【既往歴】
右腓腹筋内側頭肉離れV度損傷(2019年11月)
▷ 検査・測定(初回来院時:1/16)
【炎症・疼痛】左腓腹筋内側頭→圧痛(+)、腫脹(+)、熱感(+)、陥凹(+)、左足関節背屈時痛(+)、左足関節底屈時痛(+)
【筋スパズム】左腓腹筋内側頭、ヒラメ筋、内側ハムストリングス
【運動障害】跛行(+)
【関節可動域制限】足関節背屈ROM:右10°左-5°P(+)
▷動作分析
<1/16の歩行観察>
立脚初期から足関節底屈位、膝関節・股関節軽度屈曲位を維持したままの立脚期であった
<1/31日の片脚スクワットの観察>
両側とも股関節屈曲、足関節背屈が少なく、Knee in Toe outを呈しており、特に最大膝屈曲時では足部は外反し、内側アーチの降下がみられた。また前額面上、体幹の左右への側屈や足部の内外反が小刻みに見られ体幹と足部の不安定性が示唆された。
▷ 統合と解釈
本症例は、左腓腹筋内側頭の肉離れによる疼痛が原因となった足関節背屈可動域制限により、立脚初期から踵接地が消失し、つま先での接地となり、荷重にて疼痛を訴えていた。問診から右前方へのダッシュ時に受傷したことが考えられた。本症例のダイナミックアライメントを評価すると片脚スクワット時にKnee-in & Toe-out、股関節屈曲の減少を呈していた。このことから左脚で右前方へ蹴りだす際や走行時にもKnee-in & Toe-outが起こり、膝外反位で下腿三頭筋を使用することで腓腹筋内側頭へ過度の伸張ストレスが増大することが考えられた。またスクワット時の股関節屈曲の減少からはダッシュ時に地面を蹴る力を生み出すのは股関節伸展筋力ではなく、足関節底屈筋力を過用して行っていたことが考えられた。さらに下腿三頭筋の柔軟性低下も認められた。これら3つの要因が同時に重なったことで受傷場面で腓腹筋内側頭に伸張ストレスが過度にかかり受傷に至ったことが考えられた。
▷ 目標設定・治療プログラム
患者様の希望は2月下旬から3月にかけての試合には必ず出場したいということであった。医師と相談し、損傷の程度や一般的な治癒過程から考えるとリスクがあることは承知であるが、以下のような治療と保護を並行して行うことで、4週間後にランニングの開始、6週間後の競技復帰を目指すこととなった。
治療は損傷部位の過剰な炎症を早期に軽減させるため、SCAN療法を用い、各筋のスパズムに対しては、マイオパルスの局所通電と鍼治療を行った。また、日常生活内での損傷部位への負荷を軽減させるためにサポーターを処方し、どうしても多く動かざるを得ないときなどは、テーピングも併用するように指導した。
また、体幹不安定性や荷重時・歩行時のマルユースを改善するために、腹圧のエクササイズや健側の片脚スクワットを早期にエクササイズとして開始した。
▷ 治療結果と課題
・治療前後の歩行動作の比較は動画をご覧ください。
治療前1/16 → 治療後1/20
URL:https://www.youtube.com/watch?v=ffvVC-g3T1g
足関節背屈ROM:左-5°P(+)→10°P(-) 右10°
NRS 9 → 0
左腓腹筋内側頭→圧痛(-)、腫脹(+)、熱感(-)、陥凹(+)、左足関節背屈時痛(-)、左足関節底屈時痛(-)
歩行荷重時痛(-)
【まとめ】
本症例は腓腹筋内側頭の肉離れの患者様に対し、SCAN療法を中心に微弱電流治療とエクササイズを行った。患部の炎症症状は、微弱電流治療の生体電気の調整作用によって改善し、筋スパズムはマイオパルスの生体電気の調整作用と、鍼治療による自律神経調節作用と血流増加の作用によって改善したと考えられる。特に、アキュスコープの特徴である、「生体電気の読み取り能力」を用いたSCAN療法は、全身通電しながら炎症部位や生体電気環境の悪いところを探し出して通電を行い改善していくので、今回のような顕著な炎症症状に対して効果を発揮したものと考えられる。
また、今回の受傷の原因として片脚スクワットでみられたようなマルユースも考えられるため、早期にマルユースに対するエクササイズも併用して治療を行った。
今回の症例は、肉離れによって歩行時の痛みが顕著な方の治療でした。痛みによって歩行が制限されれば、スポーツはおろか日常生活にも支障をきたします。当院では、必要に応じて微弱電流治療機器や鍼灸治療、運動療法などを用いて、このような痛みを早期に回復できるように努めています。また、私たちは痛みからの回復だけではなく、その後の予防が1番大事だと考えています。「なぜ、その怪我をしてしまったのか」ということを改善していくことで、怪我をしない身体を作っていきませんか?
治療が必要な方、興味のある方はお気軽に当院までお問い合わせください。
PEP治療院
大阪府岸和田市別所町3-9-23
Tel:072-457-3458